さきほど、ラジオ連動企画「応援しよう!本の力で!」のご案内をしましたが。

私にとって、「この本で希望を持てた。救われた。やる気が出た!」という本は・・・?ということで、1冊ご紹介をしたいと思います。


「冒険の共有」をテーマに、単独・無酸素で8000メートル級の山にチャレンジしている若き登山家、栗城史多(くりきのぶかず)さんの著書。

『一歩を越える勇気』です。

一歩を越える勇気
一歩を越える勇気
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私は登山にはあまり興味がなく、「単独・無酸素でエベレストを登るって、超キケンなんでしょう?なんでわざわざそんなことするの?」と思っていました。

だから、この本をある編集者さんにいただいたとき、あまり期待していなかったんです。

読んでみて・・・、やられました。ものすごく感動しました。


8000メートルの山を登るのは、本当に過酷です。酸素がうすく、息苦しく、眠ってしまったら死の危険性があります。たった50グラムのものも重たく感じ、捨てていこうか本気で迷うそうです。そして、精神的圧迫も尋常ではありません。

そういった状況で、頂上を目指す人は、「自然に打ち勝つ」「山を征服する」といった気持ちを持っているのではないかと勘違いしていました。逆でした。栗城さんは「山と対峙しない」と言っています。

人間が本当に力を発揮できるときというのは、すべてを受け入れられたときなのではないかと思う。
不安も、苦しみも、いろんな気持ちも。何がいいとか悪いとかがまったくなくて、とにかくすべてがいいんだということ。執着せずに、これでいいのだと思うこと。

(中略)

克服して、打ち勝っていこうと思うとすごくパワーがいるし、いつかそれを受け止めきれなくなって、壊れてしまうのだ。
だから、そうではなくて、あるがままを受けて入れてしまえばいい。怖いという気持ちがある自分や、一歩踏み出すことをためらってしまう自分も含めて、すべてを受け入れてしまう。
何かがうまくいくときというのは、すべてを受け入れているときなのだ。



そして、印象に残っているエピソードがあります。

ダウラギリ登頂中に、酸素が足りず、目が見えなくなってしまったときのことです。寒さに震え、体が思うように動きません。そんなときにふと出てきた言葉が、「ありがとう」だったというのです。

なぜ、ありがとうと口にしたのかわからない。ただそのほうが、力が出たのだ。


苦しみに対抗しようとするのではなく、「ありがとう」と言って力を出したのです。

一歩が出ないほどつらいとき、「ありがとう」と口にすることによって一歩が出る。



「ありがとう」は困難な時代を乗り越える力のある言葉かもしれない、とも言っています。


私は、日常のちっぽけなことに心を乱され、怒ったり泣いたり、「もうダメだ」と思ったりしていますが、そんなときいつも山と栗城さんのことを思い出します。

巨大な山の前にいる栗城さんが、「ありがとう」と言っているところです。

みんな、見えない山を登っているのかもしれません。

私も「ありがとう」と声に出してみます。確かに力が湧いてくる気がするのです。



栗城さんのホームページはこちら。「冒険の共有」をしています。