注文していた斎藤孝先生の『坐る力』(文春新書)が届いたので早速読みはじめた。

バカにしてごめんなさい。私は愚かでした。
これ、めちゃくちゃ面白いではないですか。

日本人が古来からいかに姿勢、それも坐位を重視してきたかが書かれている。

じっと正座していられなければ、勉強は教えてもらえなかった。お客さんが来たとき、きちんとした正座で応対できなければ、みっともない家だと思われた。

坐る力がすなわち人間力であるという考え方があったのだ。

「腰」が重要であり、正しく腰を立てて座ることは、意識をしゃんとさせ、精神的な粘りが生まれ、折れない心を育てることができると。

齋藤先生は、こう言っている。

昨今の日本の崩れの根本は、そこにあると考えている。
頭と心の教育ばかりを強調しすぎて身体の構えを軽視してしまった。



齋藤先生が、坐に関して東洋の力に初めて目を開かされたという『坐の文化論』(山折哲雄 講談社学術文庫)という本が紹介されていた。その中で、ヨーガの坐法について書かれた部分にビックリした。

インドで発達したヨーガ坐法の、シッダ・アーサナ坐法は、足を180度近く開いて足を曲げ、両方のかかとを股にくっつけるやり方だ。(絵はなかったが、ガリガリのじいさんが思い浮かぶ。太ってたらできないと思う)


この座り方は、かかとで性器を刺激するのだという。

性的エネルギー「クンダリニー」を刺激するのが第一歩だという考え方なのだ。これを純粋なエネルギーに転化させるのを目指すらしい。

まったく知らなかった。

私が初日に、エロいと思ったのはあながち間違いじゃなかったんだ!

一方、仏教圏で発達した、仏陀の坐法はこれと対立する。

結跏趺坐という、足を反対側の足のももに載せる座り方だ。
性器への刺激を回避している点で、シッダ・アーサナと決定的に異なり、肉感的な反応に否定的であると山折氏は言っている。結跏趺坐は禁欲的、現世拒否的な坐法であると。

うーん、面白い。

私はシッダ・アーサナで瞑想してみたいが、足がそんなにアクロバチックに開かない。
結跏趺坐のほうも、10秒以上やると足首が痛くなるのでできない。

残念。


ちなみに、日本人の伝統的坐法、正座も苦手だ。


それにしても座り方と思想、文化がこんなに密接なものだとは。

本書の出だしである、「坐る力は人生を大きく支配する力である」という一文も、最初は「またまたー」と笑ったが、笑えなくなってきた。

坐る力は本当に、人生を左右するかもしれない。


坐る力 (文春新書)
齋藤 孝
文藝春秋
2009-01