地政学・戦略学者の奥山真司さんの本を読んだのは初めてです。

フォレスト出版さんから昨年いただいたのですが、ツンドクになっていました。

読んでよかった!すごくいい本でした。奥山さんの本を他にも読みたくなりました。

タイトルの「武器を捨ててしまおう」とはどういうことかというと、

スキル・技術といった「武器」は、いったん捨ててしまって、もっと上の視点を持たなければならないということです。

日本人は戦略が苦手で、技術を磨くのは得意だとよく言われます。

戦争で言えば、ゼロ戦のような戦闘機を作ることは得意だけれども、どう戦ってどう勝つのかという戦略は弱い。

ルールに従ってパフォーマンスを上げることは優秀だけれど、ルール自体を自分の都合のいいように作り変えようとはなかなか思わない。

これはスポーツの世界でも言えて、たとえばオリンピックの競技でも、日本人に不利なルールにどんどん作りかえられていくのに、それに従って頑張っていたりします。

ビジネスの世界も然りです。

日本人と欧米人や中国人の考え方の違いを、本書ではわかりやすくこんなふうに書いていました。


日本人は環境に個人を合わせようとします。一方、欧米人は環境を変えようとします。日本人の場合は台風がきたら2、3日我慢すれば過ぎ去るだろうと、自然に対して抵抗しても無駄だと考えるのが普通です。
しかし、アメリカや中国は、竜巻や台風が起こるのだったら、そのコースを変える手段はないか、コースを変えるような雲ができないかと真面目に考えます。



環境のほうを変えてやろう、ルールを変えてやろうとは私もなかなか思い及ばないですし、
そういうところが日本人の美徳であるとは思いますが、

グローバル社会の中で日本人が閉塞感を持ち、豊かであるにもかかわらず自殺者が多かったり豊かな気がしないのはここに問題があるのだと著者は指摘しています。

そして、本書では、戦略学の考え方をわかりやすく解説しながら、「個人のビジョンやミッションに落とし込む」ことをしています。

前提として、戦略の階層は以下の図のようになります。

戦略の階層


(図は本書をもとに私が作成)


就職先がなかなかないといういうとき、「資格でも取らなきゃ」と思うのはよくあることです。
英語を勉強しなきゃ、とか。
でも、これは一番下の「技術」ですよね。

士業の資格も、医師の資格も、全部「技術」の話です。この本で言う、「武器」です。

武器自体は重要ですが、何のために使うの?というのがもっと重要。

いわゆるビジョン、ミッションです。

ただ、既にお話ししたとおり、日本人は戦略から考えるのが苦手です。そういったトレーニングをしていないのです。

それなら、1つ上の階層を常に意識することで下から上に積み上げて行くしかない。

同時に、一番上の階層から下の階層に落とし込むこともやっていく努力をします。

その際、いったん武器を捨てる覚悟で臨むことが重要だと著者は言います。

ここで少し面白かったのが、戦略学の公式ではないけれど、「世界観」のうえに「死生観」や「宇宙観」といったものがあり、日本人はこっちは得意なのではないかという話です。

どういうふうに死ぬのかから考える、というような。

もしも「死生観」が見つけられれば、逆にこの下の階層に対してはまったくブレなくなると思います。


自分の世界観を考えるのは難しくても、確かに死生観なら考えやすいかもしれないですね。


そして・・・

本書の後半にある「順次戦略」と「累積戦略」の話がとても面白かったです。

順次戦略とは、いまのビジネス書や自己啓発書がよくうたっているような、数値化や見える化によって目標に向かって順番に進めていくやり方です。欧米人が得意としているものです。

一方、累積戦略とは、逆に見えない・見せないやり方で、毎日ひたすらバッティング練習をするとか、毎朝4時に起きて掃除をするとか、習慣にしているものです。目標に向かってどのくらい進んでいるのか、よくわからないわけです。でも、あるとき臨界点に達して、ジャンプすることがある。大量に本を読んで、あるときすべてが繋がったような感覚が起こる、というのもこれです。

あらゆる戦略には順次戦略と累積戦略があります。これは本当に事実です。ただしきわめて重要なのは、この2つを同時に並行して行うということです。


いま、順次戦略礼賛のようになっているけれど、累積戦略も忘れてはいけない、同じように大事なものだというのですね。

なるほどなぁ。とても腑に落ちた感じがしました。

瞑想なんかも累積戦略かもしれませんね。
私も以前は順次戦略寄りでしたが、効果がたとえよくわからなくても毎日ひたすら続けることがいかに精神にいい影響を及ぼすかを感じはじめたところです。




内容がとても濃く、読書メモを作ったら2ページを超えてしまいました。

士業の方(例もたくさん載ってます)や職人タイプの方(←私もこれ・・・)におすすめしたい本です!