昨日紹介した『世界を変えたいなら一度”武器”を捨ててしまおう』の流れで、読みたくなったのがこれ。
ツンドクになっていた『「超」入門 失敗の本質』です。

ビジネスやスポーツでもよく言う「戦略・戦術」というのは、もともと戦争のときに使うものですよね。




日本人は戦略が苦手とよく言われますが、大東亜戦争時における「戦い方」の失敗から戦略論・組織論・リーダー論等を考察しているベストセラーが『失敗の本質』です。
日本人論としての側面もあります。

本書はそれをビジネスに結び付けながらわかりやすくひも解いています。






いま私は「戦争の記憶」というプロジェクトに参加していますが、戦争から学ぶ、というのはとても重要なことだと思うのです。ビジネス戦略もそうですが、一人ひとりの人生の戦略でも、もっと大きな組織、社会、もっと言えば国家のビジョンを考えていくうえで大きな教訓が得られるはずです。


さて、本書では敗戦の理由を次の7つの視点でひも解いています。

第1章 戦略性
第2章 思考法
第3章 イノベーション
第4章 型の伝承
第5章 組織運営
第6章 リーダーシップ
第7章 日本的メンタリティ



戦略性からイノベーションまではとくに、昨日紹介した『世界を変えたいなら一度”武器”を捨ててしまおう』と共通しています。
簡単にまとめると、こんな感じです。

日本軍は戦略が曖昧で、ある指標のもとに練磨していくことが得意だが、アメリカ軍はその指標を変えるということをやってのける。
たとえば、帝国海軍は猛特訓により驚異的な技術を持つ兵員を作りだした。射撃の命中精度や艦艇操縦の技能、夜間に敵をとらえる視力などが相当なハイレベルになったのだ。しかし、アメリカ軍は「達人を不要とするシステム」で対応した。レーダーを開発したり、直撃しなくても爆発するタイプの兵器を開発したり。
ゲームのルールを変えられると日本の組織は弱く、それはイノベーションの起こりにくさにもつながる。


本書では戦略を「追いかける指標」のことだと定義しています。

そして、既存の指標を無効化し、新たな指標を打ち立てることが「イノベーション」だと言います。

たとえば、スティーブ・ジョブズは既存の音楽プレーヤー、パソコン等の指標を抽出し、それを無効化する新たな指標を製品設計で打ち立てています。

スティーブ・ジョブズのイノベーション

STEP1 「既存の指標」の発見
・工業製品的なデザイン
・処理能力や価格競争
・商品単体で完結する機能性
・通話や通信の高い技術

STEP2 敵の指標の「無効化」
・お洒落なデザイン
・感覚的な操作性
・ネットワーク型の利便性
・オープンソースによるアプリ開発

STEP3 「新指標」で戦う
プラットフォーム化し、技術競争、価格競争からは一線を引く



このステップ1〜3は、「イノベーション創造の3ステップ」と言われるものです。



一方、新たな指標を「偶然発見」するのが日本企業です。

1959年、ホンダは世界市場に積極的に進出するため、アメリカに大型バイクを販売する店舗網を作りはじめますが、期待したほど売れませんでした。
駐在していたホンダの社員が、ストレス発散で50ccの小型バイク「スーパーカブ」を休日に乗り回していたら、行く先々でアメリカ人が興味を持ちました。
あれ?
実は小型バイク市場ある?
ということで、アメリカ人の生活に合う特別仕様車をつくり、大ヒットを記録します。

つまり、「体験的学習で新戦略を察知した」わけです。

著者の鈴木博毅氏は、多くの日本企業が、体験的学習により偶然新戦略を発見する技能に極めて優れていたと言います。

面白いですねぇ。
これは強みなわけだ。

ただし、これは気を付けないと危険な部分もあります。
体験的学習によって新たな指標を発見し、そこから一点突破全面展開しがちな日本企業は、明確な基準を持たないまま「空気」が醸成されてしまうのです。

ある一点からの連想で全体を見て、「それとこれとは話が別」と言いにくくなってしまう。

最初から戦略的に考えている場合、判断基準を作っていますから、空気で流されることはないのです。


これは政治にも言えますよね。体験的なものによるイメージで空気が作られがち、というか。


こんなふうに、具体的なビジネスの例を挙げながら、『失敗の本質』に学ぶ「日本人の弱いところ」を知ることができるわけですが、同時に強みもわかるのが面白いと感じました。

強みは強みとして認識しながら、新たな視点を得られるのはいいことですね。

とくに管理職や経営者など組織づくりをしている人にとって、たくさん学びがある本ではないでしょうか。