不格好経営―チームDeNAの挑戦
南場 智子
日本経済新聞出版社
2013-06-11



先日ご紹介した藤原実さんの『IT企業が儲かるしくみ』の流れで、ツンドクになっていた『不格好経営』を読みました。

ものすごくイキオイのあるIT企業、DeNAの元社長(現取締役)、南場智子氏の本です。

ソーシャルゲームのプラットフォームを築き、いまや球団まで持っている会社ですね。

DeNAのソーシャルゲームは、私も「怪盗ロワイヤル」をちょこっとやったことあります。電車を待っている間とか、ちょっと空いた時間についやってしまう。ハマる人続出していましたよね。

本書によると、

2009年10月のサービス開始以来、わずか1ヵ月でユーザー数は100万人に達し、その勢いを保ったまま4ヵ月目には500万人を突破、2011年5月には1000万人を達成。売上高は月間数十億円というお化け事業となった。


そうです。

なんでそんなに儲かるのか?っていうのをクールに分析するなら、『IT企業が儲かるしくみ』にあるように、

・ちょっとした時間で遊べるように作られており、時間的な制約が少ない
・いくつもの小さく達成可能な目標を常に提示することで、ユーザーのモチベーションを上げている
・自分や他人のステータス、履歴が「可視化」されており、「どのくらいのレベルになるとどんなことができるのか」創造しやすくなっている
・原則的に無料だが、「さらに上にいきたい」「もっと速く先に進みたい」という気持ちが出て、有料のアイテムが欲しくなる


といった話ができるわけですが、「怪盗ロワイヤル」制作秘話を読むとまた違った視点が出てきます。

このゲームを作ったのは、新卒5年目の大塚剛司さんという方。

社運をかけたソーシャルゲームの立ち上げプロジェクトに抜擢され、ものすごい勢いでリサーチをしたそうです。

ゲームはつくったことがないどころか、ほとんどやったことすらない大塚は、その日からフェイスブックのゲームを遊び倒した。人気ゲームだけでなく、ヒットしていないゲームも総ざらいし、成功するゲームのエッセンスを彼なりに抽出した。そしてそのエッセンスを「全部盛り」にし、彼なりにアレンジしてまとめあげたのが、怪盗ロワイヤルだった。


ゲーム好きの社員に大量のダメ出しをされると、その大量の修正をきっちりとやって間に合わせ、皆をびっくりさせたのだとか。
南場氏は「ド根性の秀才仕事」と言っています。

これは一例に過ぎませんが、『不格好経営』を読むといかにド根性でやってきたかがよくわかりました。

以前テレビで南場さんと、たぶん「怪盗ロワイヤル」の大塚さんを見たことがあります。

そのときは、「新人でもどんどん大きなプロジェクトを任せる」という話中心で。若い人たちにとって「やりがいのある会社」で、デキる女社長だけれども、フラットな組織を作っているという感じ。

いや、それは間違っていないんだけど、実際はなんというか・・・ぜーんぜんクールじゃないんです。
失敗も恥もさらして、七転八倒。常に本気で粘って粘って、暑苦しいくらい。

ド根性です。

ITでうまくいっていると、つい「しくみ」のほうに目がいきがちですが、「あー、このパッションと粘り強さなんだなぁ」と思いました。どっちも忘れちゃいけないですね。

とっても面白かったです。
個性的な社員の方々とのやりとりも面白く、いつのまにか感情移入して、泣きそうになるところもありました。

後半、仕事に対する考え方が書かれており、これがとても勉強になりました。

抜き書きメモ。


・意思決定のプロセスを論理的に行うのは悪いことではない。でもそのプロセスを皆とシェアして、決定の迷いを見せることがチームの突破力を極端に弱めることがあるのだ。

・事業リーダーにとって、「正しい選択肢を選ぶ」ことは当然重要だが、それと同等以上に「選んだ選択肢を正しくする」ということが重要になる。決めるときも、実行するときも、リーダーに最も求められるのは胆力ではないだろうか。

・私が採用にあたって心がけていることは、全力で口説く、誠実に口説く、の2点に尽きる。

・人は、人によって育てられるのではなく、仕事で育つ。しかも成功体験でジャンプする。それも簡単な成功ではなく、失敗を重ね、のたうちまわって七転八倒したあげくの成功なら大きなジャンプとなる。

・成長はあくまで結果である。給料をとりながらプロとして職場についた以上、自分の成長に意識を集中するのではなく、仕事と向き合ってほしい。それが社会人の責任だ。




IT系企業やベンチャー企業を志す人はもとより、リーダー的立場にある人におすすめしたい本です。


不格好経営―チームDeNAの挑戦
南場 智子
日本経済新聞出版社
2013-06-11




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