咳がひどくて眠れない日々を過ごしております・・・。

鍼灸院で咳に効く鍼を打ってもらったり、自分でツボ押しをしたり、ネギを喉にまいて寝たり、ぬれマスクをして寝たり、ゆず湯、しょうが湯等あらゆる民間療法は試しているのですが。

産院で「咳がひどいんですけど、お腹の赤ちゃんに影響は・・・」と心配になって聞いたら

「それはない」

とキッパリ言ってもらったので、少し安心しました。でもやっぱり腹圧かかるしストレスになっているのでは・・・とついつい余計な心配をしてしまいます。

さて、そんな折、半身浴をしながら『きみは赤ちゃん』を読み、号泣。

きみは赤ちゃん
川上 未映子
文藝春秋
2014-07-09



芥川賞作家の川上未映子(私と同い年!)の出産・育児エッセイです。

 ↓ 川上未映子さんブログ
20140803川上未映子


共感するところあり、「へーそんなふうに思うんだ」と新鮮に感じるところもあり、はたまた「ベビーシッターさんに平日5時間お願いして月25万円かかってる」とか参考になる話もたくさんあり、すごく好きな本。

ゆっくり読んでいたのだけど、先日、オニ(川上未映子の息子の愛称。オニギリのオニ)が11カ月になったという後半部分の「夢のようにしあわせな朝、それから夜」の文章が良すぎて、お風呂で咳込みながら涙をボロボロ流し、汗もダラダラ流し、大変なことになりました。

芥川賞作家をつかまえて「なんていい文章なんだ」も何もないかもしれないけど、もうなんというか、それ以降、思い出すだけで電車の中でも涙がボロボロ出てくるくらいの破壊力です。

朝。抱っこしたままでわたしの背中のほうにあるカーテンをあけて、空をみせてやる。
オニの顔がぱあっと明るくなって、笑顔になって、目がどこまでも大きくなって、つやつやと濡れて、光っている。じっとみつめると、小さな目に空が映っている。わたしはそれを1秒だって見逃すまいと、まばたきもせずにみつめつづける。放っておくと、わたしの目からは涙がたれてくる。まだ言葉をもたないオニ、しゃべることができないオニは、まるでみたものと感じていることがそのままかたちになったみたいにして、わたしの目のまえに存在している。オニはそのまま、空であり、心地よさであり、空腹であり、ぐずぐずする気持ちであり、そして、よろこびだった。オニは自分がこんなふうにして空をみていたこと、なにかを感じていたこと、泣いたこと、笑ったこと、おっぱいを飲んでいたこと、わたしに抱かれていたこと、あべちゃんに抱かれていたこと、こんな毎日があったこと、瞬間があったことを、なにひとつ覚えてはいないだろう。なんにも、思いだせないだろう。でも、それでぜんぜんかまわないと思った。なぜならば、この毎日を、時間を、瞬間を、オニが空をみつめてこのような顔をしていたことを、わたしがぜんぶ覚えているからだった。そしておなじように、かつて赤んぼうだったわたしも、おそらくはこのようにして空をみていたときがあったのだ。空をみていた赤んぼうのわたしの目を、いまのわたしとおなじように、みつめていた目があったのだ。そして誰にもみつめられなくとも、すべての赤んぼうの目は、このように空を映していたときがあったのだ。オニの目に、空が映っている。オニもいつか、遠いいつか、このようにして赤んぼうを抱いて、そして、空をみる目をみつめるときがくるのだろうか。



と引用しながら、今も涙が出ると同時に激しく咳が出てめちゃ苦しくなってしまいました。。




川上未映子はネガティブな性質であるようで、本の中でもいろいろネガティブな考え方を披露しているのだけど、

出産というものが、この生きやすいとは到底いえない世界にいきなり登場させる、ある意味でとても暴力的なもののように思えてしかたのなかったわたし


というのもその一つ。

これを読んで、うーんそういう考え方もあるのかと軽いショックを受けました。確かに、そういう面もあるなと。

でも、赤んぼうの目に映る空を想像して、

私はひなちゃんに「世界にはきれいなものがたくさんあるよ。生きていくのは大変なときもあるけど、やさしい人がいっぱいいるよ」と伝えたいなぁと思いました。



きみは赤ちゃん
川上 未映子
文藝春秋
2014-07-09