「PISA 読解力」といったキーワードでグーグル検索したとき、文科省などを除くと5位以内に出てくる記事であり、私が見る限り頻繁にシェアなどされ話題となっていたのがこちら。
(2019年12月末頃現在で。2020年1月7日現在も変わらず) 



しかしPISA読解力低下のニュースについて読解したいと思っている人にとっては、残念ながらこれもハズレ記事です。

なぜなら、PISAの話じゃないからです。



 *当ブログのこれまでの記事はこちら。  
↓ 



リード文をご覧ください。 
まず前半〜中盤。
先日発表された国際学習到達度調査(PISA)で、日本の「読解力」の順位が前回の8位から15位に下がったことが話題となっている。メディアは「読解力」急落を一斉に報じたが、内容を見ると、一口に「読解力」と言っても論者によってさまざまな解釈があった。

基礎的読解力を調査するための「リーディングスキルテスト」を開発した新井紀子・国立情報学研究所教授は、「PISAは全世界で同時に調査を行うため、文化に依存する価値観や主人公の心情や著者の意図などは問わない。PISAの読解力や書く力を議論するときには、日本の国語科の伝統的な読解力と区別しないと議論が混乱することに注意すべき」という。

そうなんです。 

「読解力」という言葉で、識者たちの間でも混乱が起きていました。 

これまで見てきたように、PISA型読解力は、従来の国語的読解力とは別のものです。
これを一緒に考えてしまうとわけがわからなくなります。 

 それから実は、もう一つ混乱が起きていました。 

それが新井紀子先生が開発された「リーディングスキルテスト(RST)」等によって調査を進めている「基礎的読解力」です。

こちらは「教科書が読める」「事実について書かれている短い文章を正確に読める」という能力のことを指しています(これについても後日詳しく書きたいと思っています)。 

やはりPISA型読解力とは別のものです。 

RSTがどのようなものか知らない人のために、例題を1つ挙げておきます。
次の文を読みなさい。

仏教は東南アジア、東アジアに、キリスト教はヨーロッパ、南北アメリカ、オセアニアに、イスラム教は北アフリカ、西アジア、中央アジア、東南アジアにおもに広がっている。


この文脈において、以下の文中の空欄にあてはまる最も適当なものを選択肢のうちから1つ選びなさい。


オセアニアに広がっているのは(     )である。

.劵鵐疋ァ雫機´▲リスト教 イスラム教 な教


ユーチューバーの数名も、PISA読解力低下の話をすると言いながらいつのまにかRSTの話をしていましたし、どうやらテレビでもそうだったようです。 
でも全然違う問題だし、出題の意図が違いますよね。 


 さて、リード文の後半に戻ります。

では、国際社会で活躍するうえで必要な「読解力」とはどのようなものだろうか。また、子どもたちを取り巻く言語環境にどのような変化が起こっているのだろうか。新井紀子氏の新刊『AIに負けない子どもを育てる』から一部抜粋・編集してお届けする。

えー! 

この記事がまさに「PISA型読解力→基礎的読解力」にすり替えている例でした! 

PISA読解力低下のニュースを受けて新井先生が書き下ろしたり、新たにインタビューをしたりしたわけではなく、本の一部を引っ張ってきているだけ。 
だから、RSTの話、基礎的読解力の話はしていますが、PISA型読解力の話は出てきません。

 メディア側の都合で(?)コストかけずに、「『PISA読解力低下』は子どもたちからのSOS」といううまいタイトルをつけてリリースしていた記事だったわけです。

やられた! 

 このように、意図的なすり替えも含め「読解力」という言葉で混乱が起きているので、図で整理してみました。 私の理解ではこうなります。



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当然ながら、基礎的読解力がすべてのベース。

これがないのにPISA型読解力や国語的読解力が高いということはまずありえないでしょう。

しかし PISA型と国語的読解力は、どちらかが得意でどちらかは苦手ということがありえます。


PISA読解力低下の要因として、PISA型読解力のトレーニングを積んでいないからということと、そもそも基礎的読解力が落ちているからということの両方がありそうだ、と見えてきました。


つづく。



*『AIに負けない子どもを育てる』はとてもいい本です!未読の方はぜひ。