感情のコントロールが難しい息子に対し、こちらも感情的にならずに対処する方法を「ペアレントトレーニング」で習って非常に役に立った。

ペアレントトレーニングとは、子どもとの関わり方を学びながら、日常の子育てでの困りごとを解決するための保護者向けプログラムで、その効果は科学的に示されている(小児精神科医の友田明美先生による『子どもの脳を傷つける親がやっていること』に詳しい)。

 言ってみれば子育てにおける困りごとの「傾向と対策」だ。どういうときに問題行動が起こる傾向があるのかを認識して、その対策をあらかじめ考えておく。

 たとえば、お土産屋さんで自分の欲しいものを買ってもらえないときに怒って泣きわめくとする。実際、うちの息子にはこの傾向があった。突然それが起こり、床に寝そべってジタバタしたり大泣きしたりするとこちらもパニックになって「いいかげんにしてよ!」と怒ってしまい、火に油を注いでしまう。

 しかし対策をしておけば、冷静に対処できる。「はいはい、例のやつ来ましたね」という感じで、取り乱すことがない。

備えておけば困らない
 さらに大事なのは、あらかじめ本人に「こういうときどうするか」を伝えて練習しておくことだ。

「お土産屋さんに欲しいものがあったらどうする?」

「お母さんに言う」

「そうだね。それは買えないよって言われたら、わかったと言って、元の棚に戻すんだよ」

「じゃあ、別のやつにする」

「そのときは、本当に欲しいものかどうか一緒に考えてみようか。もし怒ったり泣きたくなったりしたら、深呼吸をして、いったんお店を出るよ」

 ごっこ遊びのようにシミュレーションをしておくと、現実に同じことが起きたときに思い出すことができる。「落ち着いて。あのとき練習したよね?」

 するとかなり改善するのだ。

こんなことが起こったらどうする?
 考えてみれば、経験の少ない子どもにとっては世の中「不測の事態」だらけ。その場で適切に判断するのが難しいのは当たり前だ。あらかじめ想定して対処法を教えておくのは理にかなっている。

 友だちにひどいことを言われたときはどうするか、仲間外れにされたときはどうするかなども、いくつかの具体的な対処法を持っておけば子ども自身が冷静に乗り越えられるようになっていく。対処法を持っていることは自信にもなり、余計な恐怖心を持たなくて済む。

 こういったトレーニングは、子育てのみでなくあらゆることに応用できる。

 ストア哲学者のセネカは、人生の苦難に対してもっとも重要なことの一つは「備えること」だと言っている。


続きは記事をご覧ください。

【必見】職場の「仕事ができる人」と「できない人」、考え方の決定的な違い



ストイックな生き方を一日一つインストールできます。

STOIC 人生の教科書ストイシズム
ブリタニー・ポラット
ダイヤモンド社
2024-11-27